山中俊治

山中俊治Shunji Yamanaka

デザイナー

photo: Naomi Circus

プロフィール

1957年愛媛県生まれ。東京大学工学部卒業後、日産自動車デザインセンター勤務。1987年よりフリーのデザイナーとして独立し、腕時計から鉄道車両に至る幅広い工業製品をデザインする一方、1991年より94年まで東京大学助教授を勤める。1994年にリーディング・エッジ・デザインを設立。デザイナーであると同時に技術者として、ヒューマノイド・ロボットや両手親指キーボードを独自開発。ウィルコムW-SIMコアモジュールやNTTドコモの「おサイフケータイ」などの通信基盤技術の発展にも寄与している。Suica自動改札機の開発では、実験に基づいて認識率を飛躍的に向上させ、実用化のキーパーソンとなった。2008年より慶應義塾大学教授、2013年より東京大学教授。東京大学生産技術研究所の山中研究室では、アスリートのための美しい義足や、付加製造技術(3Dプリンティング)を使った生き物っぽいロボットなど、人と先端技術の未来を示唆するプロジェクトを推進している。
ニューヨーク近代美術館パーマネントコレクション、Ars Erectronica STARTS、日本グッドデザイン賞(2006年には金賞とエコロジーデザイン賞を同時受賞)、 iF Design Award、毎日デザイン賞、Innovation Design Award (Red Dot)など受賞多数。

デザインに対する想い

膨大な技術と文化の蓄積をベースに、巨大な資本と資源が投入されてなされる近代のものづくり、人類の生産活動には、重い責任がのしかかっている。数億年にわたって生物が蓄積した炭素を掘り尽くし燃やしてしまった責任、環境を改変することなくしては食糧すらも確保できないほど人口をふくらませてきた責任、それでもなおその膨大な人間全てを幸福にしたいという傲慢な願望。本来は恒星の独占物であり、地球上の生態系は決して利用しようとしなかった核エネルギーさえも使って、私たち人類はどこへ行こうとしているのだろう。
この重圧に答えられるもの、いや答えられないかもしれないが、わずかに希望を感じさせるもの、それが、人の美意識なのではないかと思う。美は、ひ弱な個人の中にしか存在しない淡い感覚であるが、傲慢な人類が心の片隅に育んできた、自然に対する畏敬であり、真理に対する渇望であり、幸福への規範である。それ故に今日、デザインは、全てのものづくりの原点となり、私たち人類の心のよりどころなのである。

代表作品

  • 2009|Fragella

  • 2016|RAMI & CR-1

  • 2001|Issey Miyake Insetto

  • 2007|Ephyra

  • 2007|Kokuyo Avein

  • 2009|弓曳き小早船

  • 2018|CanguRo