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第750回デザインギャラリー1953企画展

「掛け軸の楽しみ」

松屋銀座7階・デザインギャラリー1953
 2018年12月27日(木)〜2019年1月21日(月)

作品一覧

◎クリックで拡大します。作者コメント・仕様などをご覧頂けます。

原研哉

「線で象る文字」

「素」という文字を無意識に書いていた。自分の場合、書くというより描く感覚に近いかもしれない。書家がものする字ではなく、デザイナーが象る字である。いつも用いている細いペンを用いて、文字の骨格をミニマルな造形に還元する。その行為そのものが「素」であると考えつつ。掛け軸の仕上がりを見ると不思議な感じがする。元来、画面の張りや精度に気を使う。微妙なそりも疎ましい。したがって軸装は不安である。そこがまた興味深くもあるが。

掛け軸サイズ:約W500×H770mm / 作品サイズ:約W360×H250mm

平野敬子

「Replica」

鉛筆画を印画紙(ILFORD)にプリントした1990年代の作品 “Gray” シリーズより。掛け軸の表装における技術的な条件で、印画紙(原画)を使用することができませんでしたので、印画紙作品をスキャンし、和紙に出力した複製のイメージを用いました。

掛け軸サイズ:約W370×H960mm / 作品サイズ:約W290×H410mm

伊藤隆道

「墨図」

普段あまり経験のない平面表現の制作に戸惑い、さらに掛軸という初めての表現形式に不安を感じたが、この形式の永い歴史の裏付けを作品制作を通じて知ることができたことは大きな収穫であった。今回の作品は和紙、墨、筆で直線とランダムな空間形をテーマに作品化してみたが伝統的な軸装による完成度を期待する面が大きい。これも伝統の素材や技の集積の凄さによるものである。

掛け軸サイズ:約W370×H960mm / 作品サイズ:約W250×H360mm

柏木博

「年のはじめに記憶をたどる」

猫の風子がやって来たのは木枯らしの季節。そして去年の暑いあつい夏の日、「風子眠」と書いた小さな板切れを庭の片隅に置きました。書斎の机の真ん前に、窓ガラスをとおして板切れが見えます。いまはもう使うこともなく古くなった原稿用紙を引っ張りだして、風子がやって来た日のことを思い出して書いてみました。記憶をたどる。なんだか、年のはじめにふさわしいような気もしてきました。

掛け軸サイズ:約W500×H770mm / 作品サイズ:約W360×H250mm

川上元美

「ほとんど65年ぶりの手習い」

旅先で見つけた篆刻、「好鳥枝頭亦朋友落花水面皆文章」と彫られて居た。当時調べたところ、翁森作と伝わる漢詩「四時讀書樂」の春の一節を刻んだものであった。「枝にとまっている美しい鳥も我々人類の友である、花が散り水面に浮かぶ花びらも一幅の絵となり一遍の詩となる」といった意。長年我が家の飾り棚のなかで眠っていた篆刻を何気なく手にしながら、そうだ気の進まなかった掛軸展に、この漢詩をテーマにして見ようと、65年ぶりに初心に戻って教則本のような楷書書きを試みた。

掛け軸サイズ:約W370×H960mm / 作品サイズ:約W250×H360mm

喜多俊之

「時」

時間と言うテーマで一気に筆をとりました。普段、筆を持つことが少ないため、想いだけを頼りに出来上がった小品です。空間に対する意識と形に対するインスピレーションは、自分のどこかに常々存在しているのかなぁと回顧しています。二つとして同じ形の無い空の雲、季節で変化する木々や草花など、自然の中で生かされている時の出合いに感謝したい。

掛け軸サイズ:約W370×H960mm / 作品サイズ:約W250×H360mm

北川原温

「ONE OF A KIND」

1996年、当時オランダのバレエ団NDT(ネザーランドダンスシアター)の芸術監督であったイリ・キリアンからバレエ「ONE OF A KIND」の舞台デザインを委嘱され、数十枚のスケッチを描いた。イリ・キリアンはウィリアム・フォーサイスやピナ・バウシュとともに現代バレエの極北と言われるが、日本の伝統文化に造詣が深く、優雅な叙情表現と繊細な感性の閃きの美しさは深く心に響くものがある。このスケッチのオリジナルはパリのポンピドゥ・センター(仏国立近代美術館)所蔵になっているため、記録写真データをプリントし、若干手を加え新たなドローイングとした。

掛け軸サイズ:約W370×H770mm / 作品サイズ:約W250×H250mm

小泉誠

「わじみ」

酒宴で酒を酌み交わし、その場に残った輪ジミを紙に写してみた。輪ジミの素は、日々使っている古伊万里の白磁猪口。猪口は酒器にも湯飲みにも小鉢にもなる万能器で、この猪口に野花を添え花器として、軸と共に床の間に設えてもいい。場の気配を記憶した輪ジミの痕跡が、軸の中から日常や人の気配を感じ、輪ジミも味わい深いものだと、和やかな気分になることを望んでいる。

掛け軸サイズ:約W370×H960mm / 作品サイズ:約W250×H360mm

隈研吾

「カドマツ」

門松は自然の松と人工物とのあいだにあります。自然と人工とのどっちつかずな曖昧さに興味があります。門松はその曖昧な状態の象徴です。

掛け軸サイズ:約W500×H770mm / 作品サイズ:約W360×H250mm

黒川雅之

「椅子と身体」

このところ座と椅子について考えることが多い。立つことと寝ることに中間にある「座」とは何か?建築とプロダクトの中間にある「椅子」とは何かを考え続けている。僕の思索が「椅子と身体」という本になった。その表紙にこの掛軸の絵を用いている。僕にとってメモリアルな掛軸である。

掛け軸サイズ:約W370×H770mm / 作品サイズ:約W250×H250mm

松本哲夫

「年の初めに」

目出度いかそうでないか疑問だが今年、私は齢89を迎えることと相成った。よく生きたものである。年始には気持ちを新たにし、一年の安寧と健勝を祈願しているが、いつの頃からか、自分のことではなく広く一般に対し、そんな思いを抱くようになった。「一」を拝するとき、その気持ちがより増し大きくなる。一には、先駆者、創始者、パイオニアなど勇ましい意味が含まれている。卒寿間近ではあるが、常に前を向いて一年を過ごしたいものである。

掛け軸サイズ:約W370×H960mm / 作品サイズ:約W250×H360mm

松永真

「駆ける」

2019年、
日本は、新生元年を
迎えます。
混迷した世の中、
世界も、人類も、日本も
健康でありますように。

掛け軸サイズ:約W370×H960mm / 作品サイズ:約W250×H360mm

面出薫

「闇」

やみから始まる
やみが無ければ光はない
やみは恐ろしいか
やみは美しいか
やみはとり戻せるか

自然光がうっすらと僅かにとどく和室の床の間。そこに掛かるぼんやりとした軸をイメージした。何か書いてあるような…。闇に埋もれるべき事象さえ煌々と照らし上げられてしまう現代。白い和紙に思いをしたため、それを10Bの鉛筆とミッドナイトブルーのパステルで闇に消そうとした。紙上の闇はなかなか出来なかったが楽しい時間が流れた。

掛け軸サイズ:約W370×H960mm / 作品サイズ:約W250×H360mm

三谷龍二

「雪かき」

夜になって雪が降り始めた。一時間もすると表から雪かきをする音が聞こえてくる。寒冷地では踏み固められた雪が凍ってしまうことを嫌って、まだ降り続くうちから除雪する習慣がある。一方、僕の生まれた北陸では水分をたっぷり含んだ、べた雪が降る。その雪がひと晩に1メートルも積もると、屋根にかかる重みは尋常ではなく、屋根の雪下ろしが一番重要になる。パウダースノーとべた雪という雪質の違いは、そこに暮らす人たちの雪に対する考え方や、付き合い方にも反映するが、雪かきが辛い仕事であることには変わりがない。

掛け軸サイズ:約W520×H800mm / 作品サイズ:約W380×H280mm

永井一史

「恭賀新春」

子供の時から名前を書く際、いつもバランスを崩しやすいのは一の部分であった。はじめであり、わずかであり、すべても意味する一。新しい年号がはじまることもあり、このタイミングにふさわしいのではないかと考えた。

掛け軸サイズ:約W500×H770mm / 作品サイズ:約W360×H250mm

永井一正

「母子」

平成最後の年の干支の猪の母子を描きました。ふさふさした赤い猪は子供への愛によってとても幸せです。これをご覧になった方の気持ちが和らぐことを願っております。

掛け軸サイズ:約W370×H960mm / 作品サイズ:約W250×H360mm

内藤廣

「げんばの正月」

ここ数年、建設現場でモノ拾いをしています。たとえば、木工事の職人たちが板を切る作業の下敷きにしているスタイロフォーム。縦横に走る無数のノコギリの跡。それは、飛び交う宇宙線のようでもあるし、ミクロの電子顕微鏡から見える世界のようでもあります。また、無意識に刻まれた線の集合体は、SFに出てくる巨大都市のようにも見えます。現場は宝の山です。気にいったモノを拾ってきて、それに色を塗って異化し、タブローにして壁に掛けて眺めています。正月、現場は休みです。赤く塗って、正月の現場の気分を出して、それを紙に映しとってみました。

掛け軸サイズ:約W370×H960mm / 作品サイズ:約W250×H360mm

新見隆

「不滅の『二期倶楽部』、那須の黄金」

希有なる文化事業家、北山ひとみさんは長く、那須の黒磯に、文化リゾートの先駆、唯一無二の「二期倶楽部」を営んだ。本体である、彼女じしんが創業した栄光ゼミナールのお家騒動から、星野リゾートの手に渡った。北山さん、娘の美優さんと僕らは、新しい芸術家村「アート・ビオトープ那須」を発展させている。大革命家ワーグナーの「ラインの黄金」。「黄金」は永遠である。そして、文化は必ず、金の亡者に勝つ。

掛け軸サイズ:約W370×H960mm / 作品サイズ:約W250×H360mm

佐藤卓

「意味のないもの」

自然界には、もともと意味などありません。そこに意味を求めるのが人間で、意味はあくまで人が勝手につくっているものです。近頃、人は意味がないと動かない生き物になってしまったように思えます。もしかしたらこれは悲しいことかも、という想いを込めて、意味のない文字のようなものを描き、裏返しにし、さらに上下をひっくり返しました。この行為に、全く意味はありません。

掛け軸サイズ:約W370×H960mm / 作品サイズ:約W250×H360mm

須藤玲子

「掛地 己亥」

2019年は己亥(つちのとい)、十二支ではイノシシ。突き出した平たい鼻先がトレードマーク。突進力が強い反面、敏感な鼻を持つ神経質な動物です。古来からめでたい色とされ、慶祝の意味で多く使われる真っ赤を背景に、「掛地」に仕上げました。北関東には、生まれた子供の新正月に「掛軸絵」を贈る風習がありました。人々は、名も無い職人たちが作った素朴な絵を愛し、「掛地」を飾り祝ったのです。この季節に相応しい「掛地」であることを願って。

掛け軸サイズ:約W345×H950mm / 作品サイズ:約W240×H360mm

鈴木康広

「掛け軸の水平線」

初めて掛け軸を仕立てることになり、最初に思いついたのは「水平線を描く鉛筆」のスケッチだった。軸装する段階になってよくよく見ると、「天」と「地」と称された背景と、上下に分かたれた「一文字」の間に水平線が配置された。そして、掛け軸そのものの成り立ちが上下に開かれた窓のように見えてきた。かつて人が空と海の重なりに初めて「線」を見立てた瞬間に思いを馳せるものになれば嬉しい。

掛け軸サイズ:約W500×H770mm / 作品サイズ:約W360×H250mm

田中俊行

「色はにほへと散りぬるを」

ご存知「いろはうた」の冒頭を揮毫。デザインすることの意味に通じるニュアンスを、現象させて...墨は青墨を濃いめにおろし、筆は長鋒の珍毫を使用。仮名書ですが大字なので、軸はシンプルな構成で空間的にデザインしました。

掛け軸サイズ:約W705×H1078mm

展覧会概略

◎開催時間等については、松屋銀座のWebサイトにて、営業日・営業時間をご参照ください。

作品販売

入札形式による作品の販売を行います。

  • 入札受付期間:2018年12月27日(木)〜2019年1月21日(月)
  • 最低入札価格は20,190円(税別)です。
  • 最高額をつけた方が、ご希望作品を入札金額にてご購入いただけます。
  • オンラインによる入札ご希望の方は、上記の各作品のリンク「入札ページ」からお申し込みください。
  • 会場でも入札を受け付けています。デザインコレクション売場に設置されている入札用紙をご利用になり、売場の係の者にご提出ください。