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伝統の未来

日本酒 日本酒

日本酒ブームと言われて久しく、ひと頃の落ち込みにはブレーキがかかったとはいえ、清酒の生産量は1973年の1,421千キロリットルをピークとして、2013年には444千キロリットルに、また1955年に4,021場あった生産者数(製造免許場数)も、2013年には1,652場と半減しており、状況が厳しいことに変わりはない。これは単に「日本酒が飲まれなくなった」という話ではなく、まず日本の人口そのものが減っていること、そして成人1人あたりの酒類の年間消費量が最大となったバブル景気最末期である1992年の101.8リットルから、2013年には82.8リットルまで減少するなど、健康志向や生活様式の変化、若者世代の低アルコール志向など、アルコール類全体にかかわる、さまざまな要因によるものと考えられる。

一方、特に米の使用割合の高い特定名称酒(純米酒、純米吟醸酒、吟醸酒)は、2011年を境に生産量(製成数量)が増加に転じており、2013年までの2年間で、吟醸酒が約14%、純米酒が約8%、純米吟醸酒は27%も伸びている。また海外への輸出量も、2003年の8,270キロリットルから、2014年には16,316キロリットルへ倍増、金額ベースでは2003年の39億円から、2014年は115億円へ約3倍増となっており、内外で「高級酒としての日本酒」が求められていることが明らかになってきた。この流れを受けて2016年9月に、ロバート・パーカー氏のワイン情報誌「ワイン・アドヴォケート」が日本の純米吟醸酒・大吟醸酒の初の評価ガイドを発表。高評価の製品に世界中のバイヤーが殺到する事態に陥っている。

2015年12月25日、国税庁は国が地域ブランドとして保護する「地理的表示(GI)保護制度」に基づき、「日本酒」を国レベルの地理的表示に指定した。いわゆる「清酒」は、米、米こうじ及び水を原料として発酵させてこしたもの(アルコール分が22度未満)と定義されるが、その中でも今後「日本酒」を名乗って販売できるのは、国産の米を使って国内で造られた清酒だけとなる。日本の国名を冠した酒が、やっと本来の意味での「日本酒」となったいま、その酒を生み出す風土やつくり手の顔が見え、和食に寄り添って食卓を豊かに彩る酒として消費者に「選ばれる」ために、デザインが貢献できる領域はこれまで以上に大きく広がっている。

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日本酒のポスター|
監修:松永 真

伝統的で、奥が深く、日本人の食や生活習慣から切っても切り離すことの出来ない「日本酒」。ここに登場するのは、伝統の堅持、世界への飛躍、未知への挑戦、ピリッと、ふわっと、辛口、甘口など、何でもありの、美しく、楽しい、ハッとする何か。個性豊かな10名のグラフィックデザイナーが、日本酒のなんたるかをポスターにとらえました。

10人のデザイナーによる
日本酒ポスター

SAKE IN THE SPRING|奥村靫正

おくむら ゆきまさ

グラフィックデザイナー
1947年愛知県生まれ。桑沢デザイン研究所卒業。
1970年に「WORKSHOP MU!!」設立。
はっぴいえんど、サディスティック・ミカ・バンド等のジャケットデザイン等に携わる。
79年にザ・ステューディオ・トウキョウ・ジャパン(TSTJ Inc.)設立。
Yellow Magic Orchestra(YMO)のアートディレクターとして82年よりADC賞を4回受賞。
以後、広告、エディトリアルとフィールドを広げる。

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山盛りの酒|佐藤晃一

さとう こういち

グラフィックデザイナー。
1944年群馬県高崎市生まれ。1969年東京芸術大学美術学部工芸科ビジュアルデザイン専攻卒業。
資生堂宣伝部を経て、1971年に独立。
’85年東京ADC最高賞、’90年毎日デザイン賞、’97年芸術選奨文部大臣新人賞受賞。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)ポスターコンペ一席をはじめ多数の国際ポスターコンペで受賞。作品は国内外の多数の美術館に所蔵されている。

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おいしい家系図|佐藤 卓

さとう たく

グラフィックデザイナー
1955年生まれ。
1979年東京藝術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了。
株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所設立。
「ロッテ キシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」などの商品デザイン、「金沢21世紀美術館」、「国立科学博物館」、「全国高校野球選手権大会」等のシンボルマークを手掛ける。
また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、「デザインあ」の総合指導、21_21 DESIGN SIGHTディレクターを務めるなど多岐にわたって活動。

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たのしい日本!|下谷二助

しもたに にすけ

1942年東京生まれ。
専門学校でデザインを学ぶ。63年日宣美展奨励賞受賞を機にイラストレーターに。
テーマは嗜虐やアイロニー。
寺山修司の「かもめ」、えほん寄席「やかんなめ」等、NHKテレビ作品も。
年鑑日本のイラストレーション作家賞、講談社出版文化賞さしえ賞他。
TIS会員。

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鶴と日本酒|永井一正

ながい かずまさ

グラフィックデザイナー
1929年生まれ。1951年東京芸術大学彫刻科中退。
ダイワボウを経て、1960年日本デザインセンター創立に参加、現在最高顧問。
代表作に札幌冬季オリンピック、沖縄海洋博、世界デザイン博、茨城県、新潟県、アサヒビール、JA、つくばエクスプレス、三菱UFJフィナンシャルグループ等のシンボルマーク。
富山県立近代美術館の開館以来企画展ポスター・カタログ等を35年にわたってデザイン。1990年頃からLIFEシリーズのポスターをデザイン。

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居酒屋の引き札(雪)(見)(酒)|永井裕明

ながい ひろあき

アートディレクター
1957年東京生まれ。東京都立工芸高等学校デザイン科卒業。
ブレックファーストを経て、1989年N.G.inc.設立。東京造形大学教授。
代表作に、ウツボムーンのグラフィック、佐川急便のCI・VIのブランディング開発、横浜ゴム「PRGR」「egg」「ADVAN」のグラフィック広告、いけばな草月のアートディレクション、サントリー「山崎」「膳」のグラフィック広告、和歌山県観光キャンペーンなどがある。

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酒は涙か|仲條正義

なかじょう まさよし

グラフィックデザイナー
1933年生まれ。1956年東京芸術大学美術学部図案科卒業。
資生堂宣伝部、デスカを経て、1961年仲條デザイン事務所を設立。
代表作に資生堂『花椿』のエディトリアルデザイン。
資生堂パーラーのパッケージデザイン。
東京都現代美術館、細見美術館、松屋銀座、スパイラルなどのCI計画。
大ベストセラーの日本国憲法のブックデザイン。
『暮しの手帖』表紙イラストレーションなどがある。

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初めての日本酒|服部一成

はっとり かずなり

グラフィクデザイナー
1964年生まれ。1988年東京芸術大学美術学部デザイン科卒業。
ライトパブリシテイを経てフリーランス。
主な仕事に、キユーピーハーフの広告のアートディレクション。
雑誌『真夜中』『流行通信』『here and there』、書籍『sacai A to Z』のアートディレクション。
三菱一号館美術館、新潟市美術館のVI。
エルメスのイベント「petit hのオブジェたち」のアートディレクションなどがある。

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旬に呼応する酒|原 研哉

はら けんや

デザイナー
1958年生まれ。デザインを社会に蓄えられた普遍的な知恵ととらえ、コミュニケーションを基軸とした多様なデザイン計画の立案と実践を行っている。
日本デザインセンター代表。武蔵野美術大学教授。
無印良品アートディレクション、代官山蔦屋書店VI、HOUSE VISION、らくらくスマートフォン、ピエール・エルメのパッケージなど活動の領域は多岐。国内外のデザイン賞を多数受賞。
著書『デザインのデザイン』、『白』は多言語に翻訳されている。

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日本酒の未来は安泰である|松永 真

まつなが しん

グラフィックデザイナー
1940年生まれ。1964年東京芸術大学デザイン科卒業。資生堂宣伝部を経て、1971年独立。
代表作にPeace‘86やJAPAN‘01、ヒロシマアピールズ‘07などの一連の平和ポスター。ISSEY MIYAKE、ベネッセ、国立西洋美術館などのCI計画。大ベストセラーの日本国憲法のブックデザイン。ヒット商品のスコッティや宝のカンチューハイ、資生堂ウーノ、フランスの煙草ジタンなどのパッケージデザインがある。
ニューヨークやワルシャワやニュルンブルクなど海外での大規模な個展も多く、国内外86カ所の美術館などに多くの作品が永久保存。

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