この度、日本デザインコミッティーでは、2016年度企画展といたしまして「未来資源としての日本の伝統」を見つめ直す展覧会「伝統の未来 The Future of Japanese Tradition」を松屋銀座8階・イベントスクエアに於いて、9月28日〜10月3日の会期で開催いたします。
日本には、多様な伝統産業があります。木工、漆、和紙、酒造、金工、刃物、染織、陶磁、建築……。一方ではそれらを総合する美意識の集成としての旅館もあります。これらをただ振り返るのではなく、現代風に作り直すのでもなく、世界の人々を招き入れるべき未来の日本にどう活用できるかを考えつつ、その全体を展望したいと考えます。
本年度は、1月より9月の間、8回に亘って、私どもが企画運営を行っている松屋銀座7階の「デザインギャラリー1953」を会場に、「伝統の未来│01│〜│08│」を開催してまいりましたが、今秋、イベントスクエアを会場に、8つの展覧会に加えて、金属、陶磁器、染織などのテーマを新たに組み込んだ「伝統の未来」展として展開いたします。
デザイナーの目に見えている、リアルな日本の伝統の現在をご堪能ください。
企画趣旨
日本デザインコミッティーは、日本の伝統文化を未来の資源として見据え「伝統の未来」展を開催します。世界からの訪日者数が増え続ける中、産業の軸足が日本の再発掘へと動いています。この機をとらえて日本に潜在する価値の水脈を見つめ直し、日本の新たなヴィジョンをものづくりから展望してみたいと考えます。
日本の観光資源は、気候/風土/文化/食、です。海に囲まれた列島で、国土の大半は山林に覆われ、いたるところに温泉が湧出し、一千数百年ひとつの国であり続けたことによる独創的な文化が今日にも息づいています。この国には洗練されたもてなしや、世界に影響を与えてやまない食文化があります。ハイテクノロジーや都市の賑わい、安全性など、世界の人々の来訪を迎える資源はすでに揃っています。
しかし、発注者の減少により伝統工芸は、使用の文脈から逸脱した鑑賞物へと移行し始めています。自然へのアクセスも整備の途上です。戦後70年、国土を「工場」のように用いてきた習慣上、街並みや自然景観を「資源」と考える発想が不足していました。
発足当初より日本の文化の本質を見つめていくことを標榜してきた日本デザインコミッティーは、今日の伝統工芸の実力とその可能性を見据えてみたいと考えます。ここでは、その諸相を、コミッティメンバーの専門性を基軸に今一度見渡し、未来に何が準備できているかを探ります。木工、金工、酒、漆器、陶磁器、刃物、紙、染織、建築などを独特の視点で取材し、その様相を展観します。一方で、伝統工芸の総合的な発露のステージとして「旅館」を取り上げます。文化を総合するものとしての旅館は、日本の未来を見つめる上で、示唆に富んだものと考えられます。
テクノロジーと伝統を融合し、美意識を時代の先端と掛け合わせることで何が見えてくるのか。2016年の1月から順次開催してきたデザインギャラリー展「伝統の未来」のシリーズをここで完結させます。
「価値」はどこに生まれるのか、いま一度この企画を通して確認できれば幸です。
「伝統の未来」展 コミッショナー:原 研哉
「伝統の未来 The Future of Japanese Tradition」特設サイト
開催概略
- タイトル:日本デザインコミッティー 2016年度企画展
「伝統の未来 The Future of Japanese Tradition」 - 会期:2016年9月28日(水)〜10月3日(月)午前10時〜午後8時まで
28日初日は、午後6時閉場、最終日午後5時閉場(入場は閉場の30分前まで) - 会場:松屋銀座8階イベントスクエア
- 主催:日本デザインコミッティー
- 監修:木工=三谷龍二 竹工芸=原 研哉 金工=川上元美 日本酒=松永 真 漆器=小泉 誠 刃物=柴田文江 和紙=佐藤晃一 陶磁器=小泉 誠
染織=須藤玲子 建築=隈 研吾 旅館=永井一史 - 協力:板垣元彬、井ノ上みのり、岩本忠美、ウェスティン都ホテル京都、
内田鋼一、榎本 徹、及源鋳造株式会社、大阪錫器株式会社、大橋正芳、
奥村靫正、小田寛孝、株式会社開化堂、隱崎隆一、雅叙苑、金網つじ、
株式会社KANAYA、金重有邦、かみ添、川合 優、空間鋳造、
隈研吾建築都市設計事務所、Craft planning、言美 歩、佐伯泰英、坂田和實、
佐久間年春、三条市、下谷二助、新建築社写真部、菅原工芸硝子、
有限会社清課堂、多比良敏雄、高岡市デザイン・工芸センター、
株式会社タカタレムノス、株式会社竹尾、鋳心ノ工房、鶴岡織物工業協同組合、鶴の湯、徳倉建設、富山県総合デザインセンター 、永井裕明、
株式会社中島工務店、仲條正義、日本デザインセンター 原デザイン研究所、
株式会社能作、白山陶器株式会社、株式会社八勝館、服部一成、馬場由紀子、
株式会社フォームレディ、株式会社福光屋、株式会社フジイ、株式会社二上、
べにや無何有、庖丁工房タダフサ、細野光男、前田大作、
株式会社マルト長谷川工作所、丸美工藝株式会社、株式会社水澤工務店、
民谷織物、安田織物株式会社、矢萩春恵、矢部俊一、株式会社山田写真製版所、吉田五十八記念芸術振興財団、株式会社リラインス、ロンドンギャラリー、WASARA、輪島キリモト、渡辺義雄 (五十音順) - コミッショナー:原 研哉
- 会場構成:隈 研吾
- 解説主文:橋本麻里
- 撮影・webデザイン:株式会社日本デザインセンター
トークショー
展覧会期間中、メンバーを中心とした関係者によるトークショーが開催されます。
◎予約不要・参加無料(会場への入場料が必要です)
2016年9月28日│水│
15:30〜16:30 テーマ:針葉樹 三谷龍二|川合 優、前田大作
17:00〜18:00 テーマ:旅館 原 研哉|佐藤和志、田島悦子、中道幸子
2016年9月30日│金│
18:00〜19:00 テーマ:漆 小泉 誠|桐本泰一
2016年10月1日│土│
15:30〜16:30 テーマ:刃物 柴田文江|三条市
17:00〜18:00 テーマ:日本酒 服部一成|仲條正義
2016年10月2日│日│
14:00〜15:00 テーマ:古灯器 原 研哉|面出 薫
15:30〜16:30 テーマ:旅館と金工 川上元美|永井一史
17:00〜18:00 テーマ:伝統の未来 原 研哉|田川欣哉