店主口上
2014年から世界有数のガラスメーカー、台湾ガラスのために200種類のガラス器と磁器をデザインした。まずは全体の商品群の基本となるデザイン元型を決めるために水飲み用の小さなグラスをつくった。グラスの下半分から緩やかなカーブを描いて窄まりながら底の角の丸みにまろやかに繋がり、水を入れるとガラスの厚みが消えて水だけのシルエットが残る。ワインも赤い綺麗なカーブがくっきりと浮かび上がる。この緩やかなカーブが業務用のグラスウェアにはない。液体が形を帯びる瞬間が美しい。
水を飲む日常の当たり前な習慣をリッチにしたいと思ったから、水飲みグラスを最初にデザインした。これはふつうの極みだと思う。テーブルに肘をついてワインを気楽に飲めばいい。スタッキンググラスにカフェラテを入れてもいい。
ベットサイドのピッチャーに水を。
優しいかたちのグラスは日常を平和にする。
銀座目利き百貨街「フカサワグラス」
- 店主:深澤直人
- 会場:松屋銀座 7階 デザインコレクション
- 期間:2022年2月2日(水) ― 3月1日(火)最終日午後7時閉場
◎開催時間等については、松屋銀座のWebサイトにて、営業日・営業時間をご参照ください。
「銀座目利き百貨街」について
きれいに足並みを揃える「製品」然としたものよりも、広い世界から個性的な店主の手でつかみ取ってきた逸品を見たい。評価の定まったものよりも、選者のふるいの目の独自性を尊重し、さらに自分の眼をくぐらせて価値を判定したい。世の中のそんな気分に呼応するように、過去三回に渡って開催された「銀座目利き百貨街」が、ご好評にお応えして再び登場。日本デザインコミッティーの会員が交代で店主となり2年間次々と展開します。「目利き」は真贋を判定するアカデミックな鑑定眼という意ではなく、個性的な仕事をしている店主ひとりひとりの目を活かして、ここでしか出会えない商品を選定している点に由来しています。