2008|日進木工|川上元美
川上元美さんのデザインには、川上さんの考える、人の暮らしとデザインとの距離の取り方が明確に表れている。機能的であり、存在を主張せずに控えめであり、美しい。不特定多数の人を対象とし、様々な様式の暮らしの中にランダムに配置されるモノたちの理想の姿、道具としての機能性の追求の先にある美学、控えめでありながら美しく、存在感が際立つという、一見すると矛盾するかのような有り様も、川上さんの手にかかると、みごとに具体化されるのである。「StepStep」は椅子と靴べらが合体するという、極めてユニークで個性的な発想である。この生々しい機能の表出は、時に、美から遊離する結果をもたらしかねないと想像するが、ノックダウンの組み立て式の構造、木ねじ式で工具がいらず、人の手で組み立てられるという機能的かつシンプルな構造の品格あるたたずまいは、限り無く愛らしく、美しい。川上さんの知性と品性の結実による成果物であるからである。 身体を支える装置としての機能性を超えたところで、人と椅子との間には、生涯を通して密接な関係が育まれる。木製の木肌は、年を重ねる毎に、色、艶が変化し、渋みを増すであろう。そして、家主とともにゆっくりと年を重ねるのである。 平野敬子
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川上元美さんのデザインには、川上さんの考える、人の暮らしとデザインとの距離の取り方が明確に表れている。機能的であり、存在を主張せずに控えめであり、美しい。不特定多数の人を対象とし、様々な様式の暮らしの中にランダムに配置されるモノたちの理想の姿、道具としての機能性の追求の先にある美学、控えめでありながら美しく、存在感が際立つという、一見すると矛盾するかのような有り様も、川上さんの手にかかると、みごとに具体化されるのである。「StepStep」は椅子と靴べらが合体するという、極めてユニークで個性的な発想である。この生々しい機能の表出は、時に、美から遊離する結果をもたらしかねないと想像するが、ノックダウンの組み立て式の構造、木ねじ式で工具がいらず、人の手で組み立てられるという機能的かつシンプルな構造の品格あるたたずまいは、限り無く愛らしく、美しい。川上さんの知性と品性の結実による成果物であるからである。
身体を支える装置としての機能性を超えたところで、人と椅子との間には、生涯を通して密接な関係が育まれる。木製の木肌は、年を重ねる毎に、色、艶が変化し、渋みを増すであろう。そして、家主とともにゆっくりと年を重ねるのである。
平野敬子