ロンドンのピカデリーサーカスの裏通りに、トイ・ミュゼアムというのがある。一階が売り場、二階以上が古いおもちゃの陳列にあてられた、ごくささやかなもので、日本人でここを訪ねたひとはなかったらしい。僕も新聞の三行広告で見かけて出かけていった。福田繁雄君をみると、いつもこのトイ・ミュゼアムを思い出して、日本でもこんなのをやらないかとけしかける。福田君も万ざらではないらしい。そのうち彼がトイ・ミュゼアムをやるという条件で、僕のコレクションに割愛したものがある。こんどの展覧会は、そんないきさつがあって、まだ公開するほどのコレクションでもないと渋る福田君を、強引に説得した結果である。福田君のコレクションは、デザイナーが集めただけに、いわゆる趣味のコレクションとはちがうファンクショナル・トイとでもいったものばかり。おもちゃのファンクションほど、純粋なものはあるまい。今回はこれらを空・動・建・化の四グループにわけて展示する。この種の展示品は、見るだけでなく、手にとって動かしたり、変化させてみることが必要なのだが、これ迄のわれわれの経験では、手あらくあつかったり、中には、持ち去る人々さえある有様なので、残念ながら完全公開はできない。これは見にくる人々全体の問題であり、日本の社会全体の問題でもある。完全な解決ではないが、毎日、コミッティーのメンバーのひとりが、午後3時過ぎに一回、展示品についての解説をおこなうので、特に関心のふかい方は、その頃に来場されるとよい。(勝見勝)
展覧会概略
- タイトル:第75回デザインギャラリー1953「ファンクショナル・トイ」
- 会期:1970年7月24日〜8月12日
- 会場:松屋銀座7F・デザインギャラリー1953
- 主催:日本デザインコミッティー
- 展覧会担当:勝見勝