長崎の波佐見で磁器のデザインをはじめて五十年になる森正洋さんが、和食器の一式を完成させた。高級磁器ではなく、ごく普通の家庭用和食器である。白磁の和食器がこのようなシリーズで開発されることは珍しい。通常はホテルなどの用途に作られる和洋折衷のデザインか、高級料亭用の凝った仕様のものに限られる。 一般家庭の日用の和食器は、いただき物や細切れに買い足した雑器の集合でまかなわれている。そういう意味で、森さんの和の器シリーズは、日本の食卓のスタンダードを作ろうという画期的な試みなのである。ぶり大根や、おでんなど、汁物の料理がゆったり盛りつけられる深めの皿や、ありそうでなかった小ぶりの角鉢など、使うほどに奥行き益す和の器が一式、シンプルに極まっている。(原研哉)
展覧会概略
- タイトル:第613回デザインギャラリー1953「森正洋・和の食器展」
- 会期:2005年2月23日〜3月21日
- 会場:松屋銀座7F・デザインギャラリー1953
- 主催:日本デザインコミッティー
- 展覧会担当:原研哉
- 協賛:株式会社良品計画