私にとっては古いから「いい」のではなく、「いい」から「いい」のである。それと、ものの中に掛値のない真実とか、誠意とか、すぐれた技術とかいったものは、今日のものには高精度機械以外には極めて少ない。そのないものが古き時代のものにはコッテリとある。（あるものだけが残ったといってもよい）。このコッテリとあるものは、質の栄養分として私にヴィタミンを提供し、仕事にスタミナをつけてくれる。私の「無名文化財」は大別して二つのグループになる。一つは人間が作ったもの。もう一つは自然が創ったもの。後者には、石とか貝殻とか杢板とか動物たちの毛皮とかがある。また私自身のヘソの緒もそのうちの一つだ。（剣持勇）
雑誌「室内」1964年12月より転載
展覧会概略
- タイトル：第182回デザインギャラリー1953 剣持勇のあつめた「無名文化財」
- 会期：1976年4月2日〜4月21日
- 会場：松屋銀座7F・デザインギャラリー1953
- 主催：日本デザインコミッティー
- 展覧会担当：松本哲夫
