ブックデザインや雑誌のデザインをはじめ、タイポグラフィを中心としたデザイン分野で活躍する白井敬尚氏ですが、これまで手がけられた仕事は、青土社『ユリイカ』、誠文堂新光社『アイデア』などの雑誌のほか、朗文堂『タイポグラフィの領域』『書物と活字』『欧文書体百花事典』、大日本印刷(ggg)『EXHIBITIONS』、東京タイポディレクターズクラブ『TOKYO TDC VOL.20』など多岐に亘ります。
本展では、白井氏がデザインされた造本を図書館のように閲覧用の机と椅子を用意し、本の外側のデザインだけではなく、精緻に設計されたブックフォーマットとそのページデザインもじっくりご紹介しようと計画しております。また、3月6日(日)には、銀座3丁目アップルストア内「アップルシアター」にて白井氏と本企画ディレクションの平野氏とでトークショーを開催いたします。
展覧会概略
- タイトル:第673回デザインギャラリー1953企画展「本の知と美の領域 VOL.1 — 白井敬尚の仕事」展
- 会期:2011年2月24日(木)〜2011年3月21日(月・祝) 朝10時〜夜8時、最終日午後5時閉場
- 会場:松屋銀座7F・デザインギャラリー1953
- 主催:日本デザインコミッティー
- 協力;株式会社サンエムカラー
- 企画/構成:平野敬子
トークショーのご案内
- 日時:3月6日(日)午後6時〜7時
- 場所:銀座3丁目アップルストア内「アップルシアター」
- 出演:白井敬尚(グラフィックデザイナー)+平野敬子(デザイナー/本企画ディレクター)
- テーマ:本の知と美の領域について
※先着80名様までご着席にてご参加いただけます。開始の15分前より受付を行います。
白井敬尚プロフィール
グラフィックデザイナー、1961年愛知県生まれ。株式会社正方形を経て、1998年白井敬尚形成事務所を設立。主にタイポグラフィを中心としたデザインに従事している。参考サイト
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様々な質(=レベル)の情報が、縦横無尽に、無尽蔵に増殖する時代に生きる我々にとって、価値のある優れた情報(=知識)を瞬時に選別し入手する能力の開発が、より良く生きる上での死活問題となっています。そして、依頼主と共に情報発信側に立脚するグラフィックデザイナーにとって、良質なデザインの開発と提供が責務であると考えます。
書籍にとって主体要素となる文字が「読み易い」とか「美しい」といった正当的な機能が軽んじられていると感じてきたのはいつの頃からでしょう。本のデザインにとって、知の裏付けに伴う機能性が価値の中心でなくなってきたように感じられ、表現の自由の暴力的側面とも言える近年の現象に不安感を募らせておりました。
しかし時代の現象を憂いていても仕方がなく、情報が増幅し、氾濫する現代こそ、「本の知と美」を具現化したデザインにスポットライトをあてたいと考えました。そのシリーズ「本の知と美の領域」の第一回目がグラフィックデザイナーの白井敬尚さんの展覧会です。十数年前に、片塩二朗さんが主催する「朗文堂」が発行する書籍から白井さんの存在を初めて知った以降も、「何て美しく、読み易い組版なのだろう」と、機能と美が調和したここちよさから無意識のうちに選択した本のデザインを白井さんが手掛けておられているという、白井デザインとの出会いが幾度もありました。白井さんの、寡黙で奥ゆかしい立ち居ふる舞いにカモフラージュされたデザインへの情熱、そして教育者としての側面もお持ちの研究的態度から導き出される仕事からは、デザインの品が香り立ち、ここにデザインのひとつの理想の姿を見いだしております。
企画/構成=平野敬子