私の出会ったart&designの本

2010年3月に開催された、第664回デザインギャラリー1953企画展のアーカイブ。
コミッティーメンバーが選んだ「影響を受けた3冊」に、テキストを添えてご紹介します。
多くの人たちの本と親しむきっかけとなれば幸いです。

山中俊治ポートレート
山中俊治|デザイナー

1957年愛媛県生まれ。東京大学工学部産業機械工学科卒業後、日産自動車デザインセンター勤務。Infiniti Q45のエクステリアデザインに従事。1987年よりフリーのデザイナーとして独立し、コンパクトカメラO-PRODUCT、エクリュ(いずれもオリンパス)をはじめ、腕時計から鉄道車両に至る幅広い工業製品をデザインする一方、1991年より94年まで東京大学助教授を勤める。1994年にリーディング・エッジ・デザインを設立。デザイナーであると同時に技術者として、ヒューマノイド・ロボットや両手親指キーボードを独自開発。ウィルコムW-SIMコアモジュールやNTTドコモの「おさいふ携帯」などの基礎技術の発展にも寄与している。Suica自動改札機の開発では、実験に基づいて認識率を飛躍的に向上させ、実用化のキーパーソンとなった。ドイツIF Good Design Awardやグッドデザイン賞受賞多数。2004には毎日デザイン賞を受賞し、2006年には日本グッドデザイン賞において金賞とエコロジーデザイン賞を同時受賞。
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「欲望のオブジェ」デザインと社会 1750-1980

著者=アドリアン・フォーティ 訳=高島平吾 出版社=鹿島出版会 初版年度=1992年

世界で最も美しい10の実験

著者=ロバート・P・クリース(Robert・P・Crease) 出版社=日経BP社 初版年度=2006年

Design and the Elastic Mind

著者=Paola Antonelli 出版社=The Museum of Modern Art, New York 初版年度=2008年

デザイナーとは自分が何者であるのか、何を生み出そうとしているのかを、常に自分自身に問いかけ続ける職業であると思います。その問いかけを必要とする理由は、デザインと言う行為が、自己矛盾をはらんだ刹那的なバランスの上に成り立っているからです。デザインは、人や社会の要請に応えるための、広範な知識や価値観の統合作業であると同時に、一方で、創造の起点を内的な動機に依存しする、きわめて個人的な創作活動でもあります。それ故にデザイナーは、最初の一歩を踏み出すためのインスピレーションの元となる書籍を待望し、ひとたび歩み始めてからは、自らの位置とつま先の方向を、歴史的かつ社会的に確認するための文献を必要とします。
この3冊は、私に啓示を与えてくれた光源であり、居場所を教えてくれる地図でもありました。「欲望のオブジェ」は、教条的に批判されがちなデザインの資本主義的な役割について、冷静な歴史的視点で解き明かしてくれました。「世界で最も美しい実験」は、実験装置のデザインを通じて、偉大な発見をした科学者たちが、自らの哲学的思索を現実世界に落とし込んで行くプロセスを教えてくれました。Design and the Elastic Mindは、人が作るものと人の肉体との間の生理的な交感を収集し、様々なインスピレーションを私に与えてくれています。

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