私の出会ったart&designの本

2010年3月に開催された、第664回デザインギャラリー1953企画展のアーカイブ。
コミッティーメンバーが選んだ「影響を受けた3冊」に、テキストを添えてご紹介します。
多くの人たちの本と親しむきっかけとなれば幸いです。

深澤直人ポートレート
深澤直人|プロダクトデザイナー

1956年山梨県生まれ。1980年多摩美術大学プロダクトデザイン科卒業。1989年渡米しデザインコンサルティング会社IDEO(サンフランシスコ)で8年勤務後帰国、IDEO東京支社を設立。2003年に独立しNaoto Fukasawa Design設立。「MUJI」CDプレーヤー、「±0」加湿器、「au/KDDI」INFOBAR, neonはN.Y.MOMA永久収蔵品に。B&B ITALIA、Driade、Magis、Artemide、Danese、Boffi、Vitraをはじめ、ドイツ、北欧など国内外の大手メーカーとのプロダクトを進行中。iF金賞(ドイツ)、red dot design award、D&AD賞(英国)、IDEA(米国)、毎日デザイン賞、Gマーク金賞、第5回織部賞など受賞歴は50を超える。2005年Jasper Morrisonとともに「Super Normal」を設立。無印良品のデザインアドバイザリーボード。21_21 Design Sightのディレクター。2007年Vitra Edition に参加。武蔵野美術大学教授、多摩美術大学客員教授。著書に「デザインの輪郭」(TOTO出版)、共著書「デザインの生態学」(東京書籍)、作品集「NAOTO FUKASAWA」(Phaidon)。

  • 書籍イメージ

俳句への道

著者=高浜虚子 出版社=岩波書店 初版年度=1997年

私はそれまで俳句や詩は作者の感情や思いを表す表現媒体だと誤解していた。この本を読んで、「作者の主観が表に現れている句は醜い。客観的にありのままの現象を捉え、詠んでこそ作者の深い洞察と心情がにじみ出てくるのだと」ということに感銘した。高浜虚子はこれを「客観写生」と呼んだ。この言葉が私のデザイン観を大きく変えたのは事実で、今では座右の銘となっている。

この本をAmazon.co.jpで購入

  • 書籍イメージ
  • 書籍イメージ

アフォーダンス 新しい認知の理論

著者=佐々木正人 出版社=岩波書店 初版年度=1994年

知覚はおわらない アフォーダンスへの招待

著者=佐々木正人 出版社=青土社 初版年度=2000年

人は自分の身体の周りにある世界をどのように認知しているかをよく知らない。あるいはその世界(環境)とどのように関わって(行為)いるかもあまり意識していない。それは自然発生的な行為であり、考えて行っているものではない。アフォーダンスとは環境が人に提供する価値のことで、ある顕著な状況下において人や動物が顕著にピックアップするものである。つまり「歩く」ということは一歩の足を置く場所(アフォーダンス)をピックアップしているその連続のことを指す。デザインは人がどう世界(環境)と関わっているかを知らずしてできるものではない。人が気付かずやっていることを知らなければならない。私は、この本とこの本の著者である佐々木正人さんから、人間が気付かないで営んでいるもう一つの世界の存在を知った。

『アフォーダンス 新しい認知の理論』をAmazon.co.jpで購入
『知覚はおわらない アフォーダンスへの招待』をAmazon.co.jpで購入

  • 書籍イメージ

「いき」の構造

著者=九鬼周造 出版社=岩波書店 初版年度=1979年

難しい本だった。何度も読み返し、自分なりに咀嚼した。「いき」は「媚」、「意気」、「諦め」が結合して生まれた意識状態である。目的に執着し(媚び)つつ、達成できない諦めを同時に持つことによる「張り」のようなもので、その状態を「いき」という。「意気」は「いき」に力をあたえるために執着する目的に反抗する意地のようなものだと。自分にとって大切な一冊になった。

この本をAmazon.co.jpで購入

Copyright©Japan Design Commitee Co., Ltd.