私の出会ったart&designの本

2010年3月に開催された、第664回デザインギャラリー1953企画展のアーカイブ。
コミッティーメンバーが選んだ「影響を受けた3冊」に、テキストを添えてご紹介します。
多くの人たちの本と親しむきっかけとなれば幸いです。

面出薫ポートレート
面出薫|照明デザイナー

1950年、東京生まれ。東京芸術大学大学院修士課程を修了。住宅照明から建築照明、都市・環境照明の分野まで幅広い照明デザインのブロデューサー・プランナーとして活躍するかたわら、市民参加の照明文化研究会「照明探偵団」を組織し、団長として精力的に活動を展開中。東京国際フォーラム、JR京都駅、せんだいメディアテーク、六本木ヒルズ、中国中央電視台、などの照明計画を担当。国際照明デザイン大賞、日本照明賞、日本文化デザイン賞、毎日デザイン賞などを受賞。現在、ライティング プランナーズ アソシエーツ代表、武蔵野美術大学教授、東京芸術大学、東京大学、などの非常勤講師。日本建築学会、北米照明学会、都市環境デザイン会議、日本デザインコミッティーなどの会員。著書に「建築照明の作法」TOTO出版「世界照明探偵団」鹿島出版会、「都市と建築の照明デザイン」六耀社など。

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集落の教え100

著者=原広司 出版社=彰国社 初版年度=1998年

日本のあかり

著者=山際照明造形美術新興会 初版年度=1974年

陰翳礼讃

著者=谷崎潤一郎 出版社=中央公論新社 初版年度=1975年

art&designという造語には、明らかにアートとデザインの垣根を半ば破壊したいという意図が込められているに違いない。しかし私はその意図に反して、アートとデザインとの垣根を再度種分けして捉えなおすべきだと思うこと、しばしばなのである。つまり安易にデザイン分野を侵食しビジネス的成功を収めようとするアーティストや、社会に受け入れられない腹いせにアーティストを気取るデザイナーの出現に、少なからず私は憂慮する。デザインはアートに触発されるべき性質にある。アートはデザインを尻目に時代の先端を突っ走ってこそ成立する。今、垣根を持った本物のデザイナーや本物の芸術家が必要とされているのではないだろか。art&designにはこの危うさがある。
さて、勇気をもって私が選択した3冊の本は、今の私のあり様に大変深く影響を与えたという点で共通する。私は観察を旨とするデザイナーである。「集落の教え100」には、地球上の至る所にまで身を委ねることの楽しさと、真理は人の営みの中に潜んでいることを学んだ。「日本のあかり」には、私の体内に眠る思いがけない遺伝子に気づかされた。「陰影礼讃」には、文学者の美辞に惑わされることなく、光や陰影を実証的に深く見つめる癖をつけさせていただいた。芸術的ひらめきを持って事象を鋭く観察したい。それと同時に自由な発想と周到な罠をもってデザインの技を磨きたい。私はこの3冊の本を、ことあるごとに何度も読み直している。

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