私の出会ったart&designの本

2010年3月に開催された、第664回デザインギャラリー1953企画展のアーカイブ。
コミッティーメンバーが選んだ「影響を受けた3冊」に、テキストを添えてご紹介します。
多くの人たちの本と親しむきっかけとなれば幸いです。

柏木博ポートレート
柏木博|デザイン評論家

1946年神戸生まれ。武蔵野美術大学卒業。現在、近代デザイン史専攻、武蔵野美術大学教授。デザインをとおして近代を読み解く作業をしている著作『デザインの20世紀』NHK出版(1992年)、『家事の政治学』青土社(1995年)、『日用品の文化誌』岩波書店(1999年)。『モダンデザイン批判』岩波書店(2002年)、『「しきり」の文化論』講談社(2004年)ほか多数。展覧会監修:『田中一光回顧展』東京都現代美術館(2003年)、『電脳の夢』パリ日本文化会館(2003-2004年)ほか多数。

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パサージュ論 全5巻

著者=ヴァルター・ベンヤミン 出版社=岩波書店 初版年度=1993年

都市の詩学

著者=田中純 出版社=東京大学出版会 初版年度=2007年

ニューヨーク3部作シティ・オヴ・グラス

著者=ポール・オースター 出版社=角川文庫 初版年度=1995年

幽霊たち

著者=ポール・オースター 出版社=新潮文庫 初版年度=1995年

鍵のかかった部屋

著者=ポール・オースター 出版社=白水・Uブックス 初版年度=1993年

いずれの本も、「勝ち組・負け組」というイな表現がまかりとおる現在、弱い人々、そしてデザインを目指す人々に多くの指針を与えてくれます。
「パサージュ論」。この本は、人々が浮かれ騒いでいるときに捨てていったゴミ拾いをする男に自身を重ね合わせる、ベンヤミンの「知的サンプリングと歴史哲学のデータ・ベース」だといえます。ナチス政権のもと、ユダヤ系ドイツ人の彼は、1940年スペンインに逃げ、国境で検問に捕らえられ自殺します。逃亡前に原稿をパリのバタイユに託しました。この本は、その邦訳版です。膨大な資料と引用、そして認識論的ノートであるこの本は、デザインを考える人には、もっとも重要な著作のひとつです。
「都市の詩学」は、美しくも丹念に書かれた書物です。アルド・ロッシの建築的都市、小村雪岱の描く女性、あるいは畠山直哉や森山大道の写真、さらには装飾やカリグラフィなどが対象です。さまざまな表象の痕跡をとおしてわたしたちの無意識、感覚、思考のあり方をどのようにしてとりだすことができるのかということが主題となっています。捨てられたものの可能性を吟味する著者の視点は、ベンヤミンの「歴史哲学テーゼ」を想い起こさせます。その文章はいつまでも読んでいたいという魅力にあふれています。
「ニューヨーク三部作」。この物語は、主体あるいは言語についての複雑な構成をとっています。著者、物語の主人公、仮想の主体(アラン・ポーの小説をモデルにしたドッペルゲンガー)など。とにかく面白い小説です。主体と室内を考える上でも多くの示唆を与えてくれます。

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