JAPAN DESIGN COMMITTEE

デザインギャラリー1953

第672回デザインギャラリー1953企画展「具現する眼|水谷嘉孝イラストレーション展」

2011年1月20日

水谷嘉孝氏は、精密な描写で美しいイラストを描くイラストレーターです。立花隆、原田宗典、姫野カオルコ、など著名な作家の本の装幀画やアサヒ飲料などの商品パッケージイラスト等、多数の仕事を積み重ねてきました。
特に、今回ご紹介する、月刊「一冊の本」(朝日新聞社)の表紙イラストの仕事は、1996年から現在まで継続している、水谷氏の代表的な仕事です。石や花、菓子などの自然物、襖の取手やマグカップ、レース刺繍など生活の中で使われる日用品、や凹凸の表情など描かれるモチーフは非常にシンプルなものですが、水谷氏の描写力による独特な世界がそこに出現します。展覧会では、原画三十点と月刊「一冊の本」を一堂に展示いたします。
スーパーリアルな水谷嘉孝の世界をご堪能いただきたいと思います。

展覧会概略

  • タイトル:第672回デザインギャラリー1953企画展「具現する眼|水谷嘉孝イラストレーション展」
  • 会期:2011年1月26日(水)〜2011年2月22日(火) 朝10時〜夜8時、最終日午後5時閉場
  • 会場:松屋銀座7F・デザインギャラリー1953
  • 主催:日本デザインコミッティー
  • 展覧会担当:原研哉

水谷嘉孝略歴

東京都目黒区在住
1964 年 三重県出身
1984 年 日本デザイナー学院グラフィックデザイン科卒
1984 年 イラストレーター横山明氏に師事
1988 年 フリーランスイラストレーターとして独立、現在に至る

展覧会に寄せて|展覧会ディレクション・原 研哉

イラストレーターの水谷嘉孝さんとのつきあいは20年になる。僕が描く不可思議なかたちのスケッチを、精密な陰翳とともにエアブラシで仕上げてくれる縁の下の力持ちとして仕事をお願いしたのが始まりで、以来、実現したいヴィジュアルを二人羽織のようにして生み出してきた。イメージの詳細はデザイナーがつくり、それを緻密に「具現」してくれるプロフェッショナルとしてリアル・イラストレーターが機能している。互いの領域を侵すことなく信頼しあって仕事ができているせいで、実に息の長い関係が続いている。その典型の仕事が「一冊の本」である。この展覧会ではイラストレーションに焦点を当てて、水谷嘉孝さんの原画をご覧いただきたい。水谷さんは勿論コンピューターも使える人である。しかし現在でもエアブラシを使用している。その方が綺麗に描ける世界があるからだ。

「一冊の本」という雑誌が立ち上がったのは、1996年のことだ。朝日新聞社から刊行する書籍の紹介と、新たな書籍に育つ連載を掲載した薄い本で、既に岩波書店の「図書」や新潮社の「波」など、長い伝統を持つ物もあったが、朝日新聞社もぜひ本格的な書籍誌を、ということで、初代編集長の大槻慎二さんからアートディレクションの依頼を受けた。表紙は賑々しく内容を喧伝するのではなく、超然としたヴィジュアル・オブジェクトをどかんと真ん中に据えて欲しいと頼まれた。当初は、水谷さんのエアブラシに特別なテクスチャーをはめ込んだ抽象的な作風だったが、時代が進むにつれて、オブジェクトが具象物に変わった。編集長は次々と代替わりして、この雑誌の「原住民」はもはや僕と水谷さんだけである。水谷さんとの呼吸もますます緊密になり、長年一緒に培ってきた陰翳の作り方、光の方向、反射光の加減など、ほどんと「阿吽の呼吸」である。かなりピュアなグラフィックデザインの仕事で、この人がいなくなったら、僕は片腕をもがれたような心境になるだろう。

第672回デザインギャラリー1953企画展「具現する眼|水谷嘉孝イラストレーション展」

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